[Programming] GPT-5-CodexはClaude Codeを超えたのか?比較レビュー

はじめに

OpenAIの新モデル「GPT-5-Codex」が登場し、開発者コミュニティで大きな注目を集めています。
特に「Claude Code」を普段使っている人にとっては、「果たしてGPT-5-CodexはClaude Codeを超えたのか?」という疑問が気になるところでしょう。

本記事では、両者の比較ポイントを整理し、実際にどのような場面でどちらが有利なのかを解説します。

GPT-5-Codexが注目される理由

実務的タスクの成功率が高い(SWE-bench Verified)

  • GPT-5(汎用) の公式発表で SWE-bench Verified = 74.9%。同じ発表で評価方法や除外課題(当初は477/500→現在は500件に統一)についても説明あり。つまり、実GitHub課題を修正するタイプの“現場寄り”ベンチでトップクラスの実力を示してる。 (OpenAI)

  • GPT-5-Codexは「GPT-5を“Codex向け=エージェント的コーディング”に最適化した版」。OpenAIはCodexアップデート記事とシステムカード追補で、実案件スタイルの開発・大規模リファクタ・コードレビューに合わせて訓練していると明記。評価セクションではSWE-bench Verifiedについて“500課題での報告”に移行した旨も言及されている。 (OpenAI)

  • 参考までに比較軸:AnthropicのClaude Opus 4.1 が 74.5%(同ベンチ)と公式に公表。差は僅差だけど、“Verified”で70%超を安定して出せるのは実務適性の強いシグナル。 (Anthropic)


自律性の強化(生成→テスト→修正→レビューまでシームレス)

  • 長時間の自律実行:OpenAIは「最大7時間以上、大きな課題を自走で反復実装→テスト→修正して完遂」した内部テスト結果を公開。これは“対話に都度待たずに進める”運用の支えになる。 (OpenAI)

  • コードレビュー機能を専用訓練:リポジトリ全体を横断し、依存関係を追い、コードとテストを実行して差分の妥当性を検証。実プロジェクトのコミットを用い、熟練エンジニアがレビュー品質を評価したと記載。 (OpenAI)

  • ワークフロー統合:CLI/IDE/クラウド/GitHubで同一エージェントを継続利用。端末でのペアプロ→クラウドでのバックグラウンド実行→PRレビューまで同じ文脈を持ったまま移動できる。 (OpenAI)


速さとコスト効率(特に小〜中規模タスク)

  • 動的な“考える量”の最適化:課題の複雑度に応じて推論時間を自動調整。小さな依頼や対話中の操作では軽快、大きなタスクでは粘り強く時間をかける設計。 (OpenAI)

  • トークン効率:社内実トラフィックの下位10%ターンでは、GPT-5比で生成トークンを93.7%削減。一方でヘビーな上位10%では倍の時間を使ってでも仕上げる—つまり**“速さ”と“粘り”を自動で振る**。 (OpenAI)

  • クラウド実行のレイテンシ改善コンテナキャッシュ等で中央値の完了時間を90%短縮。短いタスクほどこの恩恵が効きやすい。 (OpenAI)

  • 料金まわり:CodexはChatGPTのPlus/Pro/Business/Edu/Enterpriseに含まれ、追加クレジットで拡張可能。APIでモデルを直に使う場合は**GPT-5の従量課金(例:$1.25/100万入力トークン)**も公表されている。(Codex内の利用はプランの枠組みで管理) (OpenAI)

  • Claudeとの体感差:公式な“速度直接比較”は各社とも出していないので断言は避けるべき。ただ、Codexの動的推論&キャッシュ最適化小〜中規模の反復開発でレイテンシ/コストを抑えやすい設計だと一次情報から読める。 (OpenAI)


柔軟な指示理解(プロンプト忠実度と細かい制御)

  • “より操縦しやすい(steerable)”AGENTS.md の指示遵守性向上やコード品質面のチューニングが明記。長いスタイル指定を書かなくても意図通りに合わせやすい。 (OpenAI)

  • 応答の“長さ”と“思考量”をAPIで指定verbosity(短め/普通/詳しめ)とreasoning_effort(最小〜高)のパラメータで出力の粒度と推論コストを直にコントロールできる。 (OpenAI)

  • ツール利用の精度と拡張性:CLI/IDE/クラウドでツール呼び出しが堅牢化。MCPやWeb検索の統合も強化され、外部システムと連携したエージェント運用がやりやすい。 (OpenAI)

まとめ(実務に効く示唆)

  • Verified 75%前後の“解決力”+ 長時間の自走 + 高速レイテンシ最適化の三点セットで、日々の開発ワークを丸ごと任せやすくなってる。

  • 速度・コストは**“動的推論”と“クラウド最適化”**が効く場面ほど差が出やすい。

  • プロンプトは**“要件→受け入れ基準→テスト観点”**の順で短く渡すと、Codex側のチューニングと噛み合う。

Claude Codeが依然強い点

1) 複雑で大規模なタスク処理が強い理由

  • 全体把握→多ファイル編集 Claude Code は “agentic search” でコードベース全体の構造と依存関係を自動で理解し、複数ファイルにまたがる一貫した変更を行えるよう設計されている。プロダクトページでも「手動でコンテキスト選択せずにプロジェクト構造を把握」「強力なマルチファイル編集」を前面に出している。(Anthropic)

  • プロジェクト規模を意識した“コードベースQ&A/オンボーディング” 公式のベストプラクティスでは、巨大コードベースを横断検索しながら要点を抽出する“Codebase Q&A”や、git 履歴を遡って設計判断の背景を辿る運用を推奨。依存関係や設計思想を含む“文脈の太い理解”に向けた流儀が提示されている。(Anthropic)

  • プロンプト拡張用の CLAUDE.md リポジトリやモノレポの各レイヤに CLAUDE.md を置いて設計方針・コーディング規約・ビルド手順などを読み込ませる流儀が公式に明記。これが“設計思想を含む理解”を実務で安定させる。(Anthropic)


2) 安全性・承認フロー(誤操作を抑える仕組み)

  • デフォルトは“厳格な読み取り専用” 編集・テスト実行・コマンド実行は明示許可が必要。一回限り/常時許可の選択ができ、危険度の高い Bash は実行前に承認を要求。設計思想として“透明性と制御”を重視している。(Claude Docs)

  • 書き込み境界の制限 書き込みは起動ディレクトリ配下に限定(親ディレクトリは書けない)。ネットワーク系や WebFetch は既定で承認必須、怪しい Bash は許可済みでも手動承認にフォールバックする“fail-closed”が取られている。(Claude Docs)

  • 許可モデル:allow / ask / deny .claude/settings.json許可・要確認・拒否をパターン定義(例:Bash(npm run test:*) は allow、Read(./.env) は deny)。機密ファイルは deny で「不可視化」できる。組織ポリシー > CLI > ローカル設定の優先順位も公式化され、エンタープライズは管理ポリシーで強制可能。(Claude Docs)

  • 承認疲れ対策&運用注意 承認連打を減らすために許可リスト/Accept Edits モードなどの仕掛けを持つ一方、-p(非対話・ヘッドレス)では初回の信頼確認が無効になる等のトレードオフが明示。IDE で自動編集を許すと IDE 設定ファイル経由で権限を迂回され得るため、VS Code Restricted Mode や手動承認の併用が推奨。(Claude Docs)

  • 実ユーザー観測(補助線) 設定面の解説(allow/deny/ask の実例)や、過剰な承認要求に悩む声危険なスキップフラグの存在などコミュニティ観測もある(採否は自己責任)。(eesel AI)


3) 開発体験(DX)の完成度:UI/統合と運用のしやすさ

  • “ターミナル一体”+ IDE 連携 基本はターミナル常駐(REPL)だが、VS Code/JetBrains に専用連携があり、 ワンクイック起動IDE の差分ビューでのインライン確認選択範囲の自動共有ファイル参照ショートカット診断(lint/型エラー)共有など、レビュー〜修正のループが IDE 内で閉じる。(Anthropic)

  • “あなたのツールで動く”設計 端末・CI・GitHub/GitLab とシームレス連携(Actions/CI ガイドあり)。ヘッドレスモードで“PR コメントを自動反映”“失敗したビルドの自動修復”など非対話オートメーションにも展開できる。(Anthropic)

  • “改変は常にあなたの承認下”というUI哲学 プロダクトページでも**「明示許可なしにファイルを変更しない」**を売りにしており、**レビュー UI(diff × 承認)**と安全設計がDXの核になっている。(Anthropic)


すぐ使える安全テンプレ(最小構成)

.claude/settings.json に置く例(安全第一でスタート、必要に応じて allow を増やす):

{
  "permissions": {
    "allow": [
      "Bash(npm run lint)",
      "Bash(npm run test:*)",
      "Edit(*)"
    ],
    "ask": [
      "Bash(git commit:*)",
      "Bash(git push:*)"
    ],
    "deny": [
      "Bash(curl:*)",
      "Bash(wget:*)",
      "Read(./.env)",
      "Read(./.env.*)",
      "Read(./secrets/**)"
    ]
  },
  "defaultMode": "acceptEdits"
}
  • deny.envsecrets/**不可視化(誤読出し防止)。
  • ask副作用の大きい操作は逐次承認
  • allow可逆で安全な作業から広げる。 上記は公式の権限モデル/優先順位の範囲内で機能する。(Claude Docs)

まとめ(実務での使い分け指針)

  • 巨大・複雑コードベースの理解〜多ファイル変更は、Claude Code のagentic search × 設計文脈取り込みが強い。(Anthropic)

  • 安全性と承認フロー読み取り専用デフォルト+細粒度パーミッションで堅牢(ただし運用での承認疲れは設計と教育で吸収)。(Claude Docs)

  • DXは**ターミナル起点 + IDE 統合(diff/選択共有/診断共有)**で、レビュー→適用→再検証の所要時間を減らす。(Anthropic)

総合比較

観点 GPT-5-Codex Claude Code 補足リサーチ・出典
精度・成功率 SWE-bench Verifiedで74.5%(GPT-5単体は74.9%)—GitHub課題を実際に修正する難易度の高いベンチでトップ級【OpenAI System Card】。Codex版は特に実案件スタイルのタスクに調整されている。 複雑タスクでの強み。大規模リポジトリの依存関係理解や設計思想の反映に優れる。CLAUDE.mdやエージェント検索で設計文脈を組み込める【Anthropic公式】。 GPT-5-Codexは「正確に直す力」が実証済み、Claudeは「設計背景を踏まえた判断」で優位。
スピード・コスト 動的推論+キャッシュ最適化で軽タスクの完了時間を90%短縮、下位10%のケースでは生成トークンを93.7%削減【OpenAI System Card】。API課金も$1.25/100万トークンと比較的安価。 安定性重視。過剰に速さを追わず、一貫した応答を返す設計。コスト面の一次情報は非公開だが、実ユーザーは「処理は遅めだが堅実」という声が多い。 GPT-5-Codexは小〜中規模開発で「軽快さ+コスパ」、Claudeは「安定実行」で選ばれる。
自律性 7時間以上の連続自走実行が可能。コード生成→テスト→修正→再テストのループを人手なしで継続【OpenAI発表】。 ステップごとに人間が承認・介入しやすい。安全に確認を挟みながら進むため、大規模案件の慎重さと相性が良い。 Codexは「丸投げ運用」ができる、自律型。Claudeは「一緒に歩く」伴走型。
安全性 柔軟性はあるが利用者の判断に委ねられる部分が多い。大規模操作では誤操作リスクがあるためレビュー必須。 承認フローが堅牢。デフォルトは読み取り専用。Bash/ネットワーク操作は常に承認、.claude/settings.jsonで精密制御。 セキュリティ優先ならClaude、スピード重視ならCodex。
UX/統合性 CLI/IDE/クラウドで一貫利用。軽快でシンプルだが、UXは「ツール感」に近い。 IDE統合がリッチ。VS Code/JetBrainsで差分ビュー承認、診断共有、範囲選択連携などDXを最大化 Codexは「シンプル統合」、Claudeは「UI完成度が高い統合」。

総括

  • GPT-5-Codex

    • 強み: 実務ベンチ高得点、速さ・コスト効率、自律的に最後までやりきる。
    • 弱み: 安全設計は緩め、操作責任はユーザー側。
  • Claude Code

    • 強み: 複雑な依存関係や設計思想を取り込む力、承認フローの安全性、IDEとの統合によるDX。
    • 弱み: 処理速度やコスト効率は控えめ、完全自動は苦手。

👉 一言でいうなら、

  • 「小回りとスピードのCodex」 vs 「安全性と大規模性のClaude」

どちらを選ぶべきか?

GPT-5-Codex が向く場面

  • プロトタイピング/小規模開発

    • SWE-bench Verified で 74.9%(Claude Opus 4.1 も同水準)を記録しており、「与えられた課題をスピーディーに解決」する力が実証済み。
    • 推論量を動的に調整する仕組みがあり、軽いタスクではトークン消費を 90%以上削減し、中央値の完了時間も 90%短縮【OpenAI System Card】。小さな依頼ほどスピードとコスパの良さが際立つ。
    • CLI/IDE/クラウドで一貫利用でき、ワークフローを横断してシームレスに作業を進められる。

Claude Code が向く場面

  • 大規模・クリティカルな開発

    • 依存関係の多いリポジトリや設計思想の理解に強い。CLAUDE.mdやエージェント検索で設計文脈を吸収し、マルチファイルの整合性を保った変更が可能。
    • デフォルトは 厳格な読み取り専用。ファイル編集や Bash 実行は承認が必須で、.claude/settings.jsonallow / ask / deny を精密に制御できる。安全性・コンプライアンス重視の現場と相性が良い。
    • **IDE 統合(VS Code/JetBrains)**はリッチで、差分レビュー、選択範囲共有、診断結果の反映など DX が高い。チーム開発でのレビュー効率化に強い。

総合評価

  • スピード&コスト効率 → GPT-5-Codex に分がある
  • 大規模性&安全性 → Claude Code に軍配
  • 精度・成功率 → 両者ほぼ互角(SWE-bench で70%台中盤)
  • UX/統合性 → Claude Code が優れる(特にIDEまわり)

結論

現状では 「用途による使い分け」 が最適解。 ただし、日常の開発ワーク全体を考えると、速度・コスト効率・自律性の高さで GPT-5-Codex が一歩リードしているのは確かです。

おわりに

AIによるコーディング支援は、ここ数年で大きく変化しました。

かつては「コードを補完する便利な道具」にすぎなかったものが、今では SWE-bench Verified のような実務課題ベンチで 70%台後半の成功率を示し、長時間にわたり自律的に修正・テスト・レビューを繰り返す「共同開発者」へと進化しています。

  • GPT-5-Codex は「スピードとコスト効率、自律実行」を武器に、日常の開発フローを軽快に支えるパートナー。
  • Claude Code は「大規模性と安全性、IDE統合の完成度」で、堅牢なプロジェクトやチーム開発を支える相棒。

両者はライバルであると同時に補完関係にもあり、ユースケースによって賢く選び、時に併用することが現実的な戦略です。

結局のところ、「どちらが優れているか」ではなく、**「どちらを自分の開発スタイルに合わせて活かせるか」**が鍵になるでしょう。

AIと人間が一緒にコードを書く未来は、すでに始まっています。