[数学] 数学は風化しない:エンジニアが最後に辿り着く武器

1. イントロ

技術というものは積み上げれば積み上げるほど形になる。
けれど、一度手を止めると、砂の城みたいにあっという間に崩れていく。
UnityでもThree.jsでも、少し離れれば手触りが鈍り、
積み上げたはずのスキルが風にさらわれていくような感覚になる。

だが――
数学だけは、崩れない。

ピタゴラスも、三角関数も、ベクトルも、行列も、
1000年前と同じまま、平然とそこにある。
私がThree.jsで Vector3 に触れ、
Unityで Quaternion を理解し、
ベジェ曲線を自作し、Box3 を組み上げた時、
その根底にはいつも“数学”があった。

フレームワークは変わる。
エンジンは壊れる。
APIは更新される。
AIは暴走する時もある。

でも、数学は風化しない。

2. “軽視される数学” の誤解

エンジニア界隈では、「数学はいらない」という声をよく聞く。
言語やフレームワークが進化し、AIがコードを書き、
「動けばいい」の世界が広がったことで、
数学はどこか“不要な知識”のように扱われる場面も多い。

しかし、それは本質を見誤っている。
正確には──

数学が軽視されているように“見えるだけ”だ。

初心者層の多くは「動いた」だけで満足する

ChatGPTのコピペで動いた、
Qiitaのスニペットで動いた、
StackOverflowのコードが動いた。

この段階では、
内積も外積も、ベクトル空間も、行列の意味も関係ない。

だから数学は“なくてもいい知識”に見えてしまう。

ライブラリが数学を上手く隠している

Three.js の normalize()、
Unity の Quaternion.LookRotation()、
ShaderGraph のノード群。

これらは、本来あるべき数学を徹底的に隠すように設計されている。

表面上は「ボタン操作」や「関数1行」で済むため、
裏で何が起きているか意識されない。

数学がわかる人が圧倒的に少ない

そもそも、
ベクトル・行列・射影変換・三角関数・微分を
“実装レベル”で理解できるエンジニアは多くない。

分かる人が少ないから、
数学の価値を語る人も少ない。

結果だけ見れば、
「数学は軽視されている」ように見える。

3. 変わる技術・変わらない数学

この数年だけでも、扱う技術は大きく変わった。

  • Three.js の API は更新され続ける
  • Unity は 2022 → 2023 → 6000 系と急激に変化
  • WebXR は毎年仕様が変わる
  • Shader は HLSL/GLSL の書き方が微妙に変わる
  • GPU のアーキテクチャも世代ごとに書き方が変わる

エンジニアが触る“技術”は、常に変わり続ける。
今日使えた手法が、明日には非推奨になる世界だ。

Three.js

頻繁にアップデートされ、
Scene, Renderer, BufferGeometry などの内部実装は常に進化する。
WebGPU への移行も進んでいる。

Unity

バージョンアップごとに挙動が変わり、
URP や HDRP の仕様も変動し、
6000番台ではさらに内部構造が変わった。
パッケージ依存の不具合もついてくる。

WebXR

対応ブラウザ・デバイス・API が揺れ動き、
同じコードでも“今”動くかは毎年違う。

Shader(GLSL / HLSL)

書き方も制限も補完関数も変わり、
最適化の考え方も GPU 世代によって違う。


つまり、
技術は「触っていないとすぐに置いていかれる」世界だ。

しかし、その裏側で動いている“本質”は変わらない。

  • ベクトルはベクトルのまま
  • 三角関数は三角関数のまま
  • 行列の掛け算は変わらない
  • 法線と光源の内積で明るさが決まる
  • Quaternion の本質は回転の合成
  • デプスは z-buffer
  • 射影行列はいつも同じ構造

数学だけは、1mmも変わらない。

Three.js が変わっても、
Unity が壊れても、
WebXR の API が揺れても、
Shader の記法が変わっても、

根本の“数学”を理解していれば、
どんな技術にも適応できる。

技術は時代に流される。
しかし数学は、時代の下に流れる“地層”みたいなものだ。

上は常に変化するが、
地層はずっとそのまま。

エンジンが変わっても、数学が変わることは一生ない。

だから数学は強いし、
数学を知っているエンジニアは、
どんな変化にも飲まれない。

4. あなたの経験で得た「数学は風化しない」実感

私が「数学は風化しない」と確信した理由は、
自分の身体でそれを何度も体験したからだ。

Vector3

半年ぶりに Three.js を触った時、
new THREE.Vector3() を見た瞬間に感覚を思い出した。
向きベクトルを normalize する手触りも、
内積で角度を求める感覚も、
距離の計算も、すぐに指が動いた。

ベクトルの数式が身体にこびりついていた。

Box3(当たり判定)

自作で当たり判定を書いていた頃に覚えた
「最小点と最大点」「重なり判定」の構造は、
半年離れても消えていなかった。

演算は覚えていなくても、
“空間を区切る”感覚は完全に残っていた。

ベジェ曲線

Unityでベジェレール自動生成を作った時、
Three.jsで作った4点ベジェの記憶が蘇った。
パラメトリック方程式、t の使い方、
曲線上の点を取る流れ……何も見ずに書けた。

応用レベルでも数学の基礎がそのまま生きた。

Quaternion

最初は理解不能だったクォータニオンも、
一度本質を理解すると消えなかった。

tで回転を補間しても破綻しない感覚、
q * v * q^-1 でベクトルを回す構造、
“絶対回転”を WebXR で扱う時のルール。

Unityを離れても、
Three.jsを離れても、
“回転とは何か”を理解した感覚は失われなかった。


離れた期間があっても、
エンジンが変わっても、
APIの書き方が変わっても、
数学の部分だけは、驚くほどそのままだった。

この経験が、
「数学は風化しない」という確信につながった。

技術は忘れる。
コードは忘れる。
仕様は変わる。

でも数学は、
一度理解すると身体に定着する。

だからこそ、
数学は“積み上げ続ける価値のあるスキル”なんだ。

5. なぜ数学が最終的な“武器”なのか

数学が強いのは、 単に「知識として役に立つから」ではない。

もっと根本的な理由がある。

① エンジンに依存しない

Unity が壊れても、 Three.js が仕様変更しても、 WebXR のAPIが変わっても、 ShaderGraph のUIが変わっても、

数学さえ分かっていれば、すぐ適応できる。

  • ベクトルが分かる → どんな空間でも移動ロジックを作れる
  • 行列が分かる → カメラ変換もモデル変換も理解できる
  • 曲線のパラメトリックが分かる → ベジェもSplineも怖くない
  • クォータニオンが分かる → エンジンが違っても回転は同じ

技術は変わる。 数学は変わらない。

だから数学は“土台”になる。


② AI時代にも絶対に消えない

AIはコードを生成できる。 でも、

  • 数式の意味
  • 空間的な直感
  • 最適化の方針
  • ベクトルの正しい扱い
  • 物理のモデル化
  • シェーダーの数理的本質

ここは 人間が理解していないと間違いを見抜けない

AIが間違えたコードを正せるのは、 数学を理解しているエンジニアだけ。

だから数学は、 AI時代で最も価値が上がるスキルになった。


③ 理解スピードが圧倒的に速くなる

数学を理解していると、 どんな技術も “訳語” を読む感覚になる。

  • Three.js の Raycaster → ベクトルと直線の交差
  • Unity の Shader → 内積・外積・光源ベクトル
  • WebXR の姿勢 → クォータニオンの絶対回転
  • カメラの透視投影 → 行列の射影変換
  • Slerp → クォータニオンの球面補間
  • 当たり判定 → Box の重なり条件

数学を理解していると、 初見でも理解できる。 触った瞬間に意味が分かる。

技術を学ぶ速度が、 数学を知らない人の何倍にもなる。


④ 応用範囲があまりにも広い

数学は、一つ学べば無限に応用できる。

ベクトルを学べば:

  • 移動
  • 衝突
  • 方向
  • 速度
  • 反射
  • カメラの向き
  • シェーダーの角度計算
  • 物理エンジン

全部理解しやすくなる。

行列を学べば:

  • カメラ
  • 回転
  • モデル変換
  • プロシージャル生成
  • レンダリングパイプライン
  • WebGPU

全部に通じる。

クォータニオンを学べば:

  • 3Dアニメーション
  • VR/AR
  • 姿勢制御
  • 補間
  • カメラ制御
  • ロボット工学

どこでも使える。

数学は「一分野だけの武器」ではなく、 すべてを繋ぐ“万能鍵”のようなものだ。


✔ 結論

技術は移り変わる。 AIはどんどん進化する。 エンジンは壊れるし、APIは変わる。

でも、数学だけは風化せず、 1000年前と同じまま、未来でも使える。

6. 結論:数学こそ積み上げる価値がある

技術は積み上げても手を離せば風化する。 エンジンは壊れ、APIは変わり、 流行りのフレームワークは数年で姿を消す。

だけど数学は違う。 1000年前の数式が、今日も明日もそのまま動く。 Three.jsでもUnityでも、WebXRでもShaderでも、 土台になっているのは必ず数学だった。

私が遠回りして気づいたのは、 “数学だけは裏切らない” という事実だ。

技術を覚えても、流行は変わる。 AIがコードを書けるようになっても、 AIの間違いを見抜くのは数学を理解している人間だけだ。

だからこそ言い切れる。

数学こそ、積み上げる価値のあるスキルだ。 一度身につけた数学は風化しない。 どの技術にも応用できるし、 どんな時代でも使い続けられる。

もし迷っているなら、いま学べ。 エンジニアとして生きるなら、 数学ほど確かな“地面”はない。